強化学習1-7では、商品売買取引の際に発生する不随費用(ふずいひよう)について詳しく解説していきます。
日常の買い物でも、ネットで商品を注文すると送料が発生したり、メルカリなどで商品を売るにしても送料が発生しますよね。
これと同じようにビジネスでも商品代金とは別に費用がかかります。
この商品代金とは別にかかる費用を「諸掛(しょがかり)」と言います。
諸掛は、日商簿記3級試験で間違えやすいポイントでもあります。今回の学習でしっかり理解して身に着けてしまいましょう。
目次
まずは、用語解説
まずは、用語の解説から。参考書や問題集でも使われる用語なので各用語が何をさすのか知っておきましょう。
付随費用(ふずいひよう)とは?
付随費用とは、
資産の取得や処分などの取引に関連(付随)して発生した費用のこと
日商簿記3級での不随費用の出題について
日商簿記3級では、「商品売買」と「有形固定資産の売買」の問題で付随費用の仕訳を問われます。
強化学習1-7は商品売買の不随費用について学びます。
なお、有形固定資産の売買に関する付随費用については強化学習1-●で解説します。
諸掛(しょがかり)とは?
諸掛とは、
付随費用のうち、商品売買の際に発生する発送運賃や運送費、 関税などの費用のこと
仕入諸掛と売上諸掛(販売諸掛)とは?
商品を仕入れるときにかかる費用を仕入諸掛といい、 商品を売り上げた時にかかる費用を売上諸掛といいます。
2つの諸掛(しょがかり) |
|
仕入諸掛(しいれしょがかり) | 商品を仕入れるときに商品代金以外に発生する費用のこと |
売上諸掛(うりあげしょがかり) /販売諸掛(はんばいしょがかり) |
商品を売り上げたとき商品代金以外に発生する費用のこと |
諸掛(仕入諸掛・売上諸掛)の仕訳のポイント
「最終的に誰が支払うのか」で仕訳の方法が変わる
商品売買の際に、商品代金以外にかかる費用である「諸掛」は、最終的に誰が支払うのか、「最終支払者が誰か」で仕訳の方法が変わります。
取引 シーン |
最終支払者 | 取引時の処理 | 使用する勘定科目 |
仕入 | 自社(当社) | 自社の「費用」として処理 | 「仕入」に含める |
先方(取引先) | 自社の「資産」として処理 ※一時的に支払う(立替える)ので後でお金を受取る権利となり資産 |
仕入とは別に 「立替金」として独立させる |
|
販売 (売り上げ) |
自社(当社) | 自社の「費用」として処理 | 売上とは別に 「発送費」「荷造運賃」「荷造費」として独立させる ※どの勘定科目を使用するかは問題文から判断する |
先方(取引先) |
自社の「資産」として処理 ※一時的に支払う(立替える)ので後でお金を受取る権利となり資産 |
「売掛金(資産)」に含める | |
売掛金とは別に 「立替金(資産)」として独立させる |
この一覧を見ただけでは、よく分からないと思うのでそれぞれ詳しく解説していきましょう。
「仕入諸掛」の詳細と仕訳
仕入諸掛(しいれしょがかり)とは?
仕入諸掛とは、
商品を仕入れるときに商品代金以外に発生する費用のこと
仕入時の諸掛(仕入諸掛)の仕訳のポイント
仕入の際に発生する諸掛の処理は次の2パターンになります。
- 「仕入」に含める
- 仕入とは別に「立替金」として独立させる
①「仕入」に含める
送料などの費用を自分で負担(支払い)しないと、商品が手に入らないときには「仕入」に含めて仕訳をします。
②仕入とは別に「立替金」として独立させる
本来なら取引先が負担する代金を一時的に立て替えるときに、「立替金」として仕訳をします。
仕入諸掛の仕訳を例題とともに理解する
①商品代金以外の費用(諸掛)を仕入に含める場合の仕訳
例1)商品¥5,000円を掛けで仕入れ、送料¥350円を現金で支払った。
この取引内容は次のように仕訳します。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
仕入 | 5,350 | 買掛金 現金 |
5,000 350 |
【仕訳解説】
- 「仕入れ」「送料」が問題文にあるので「仕入諸掛」を意識し、分かりやすいところから仕訳をしていきます。
- 「掛けで仕入れ」の仕入と掛けの言葉から「買掛金の増加」と判断します。
- 買掛金は「負債」の勘定科目なので、増加の場合には貸方に記録します。
- なお、買掛金の金額は、商品そのものの代金なので貸方に「買掛金¥5,000」と記録します。
- 次に「¥350円を現金で支払った」から「現金の減少」と判断します。
- 現金は「資産」の勘定科目なので、減少の場合には貸方に記録します。
- 現金の金額は支払った金額そのままなので、貸方に「現金¥350」を記録します。
- 最後に「仕入」の処理をします。今回は商品の仕入なので「仕入の増加」と判断します。
- 仕入は「費用」の勘定科目なので、増加の場合借方に記録します。
- なお、仕入の金額は、買掛金¥5,000+送料¥350なので借方に「仕入¥5,350」と記録します。
- 複式簿記のルール通り、借方と貸方の金額は一致します。
例2)商品30,000円を現金で仕入れ、当店が負担する運賃1,000円は小切手を振り出して支払った。
この取引内容は次のように仕訳します。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
仕入 | 31,000 | 当座預金 現金 |
1,000 30,000 |
【仕訳解説】
- 「仕入れ」「運賃」が問題文にあるので「仕入諸掛」を意識し、分かりやすいところから仕訳をしていきます。
- 「小切手を振り出して支払った」から自社振出小切手の仕訳だと判断します。自社で振出した小切手は「当座預金の減少」です。(理由が分からない場合には強化学習1-●を復習してください)
- 当座預金は「資産」の勘定科目なので、減少した時には貸方に記録します。
- なお、当座預金の金額は振り出した小切手の額なので貸方に「当座預金¥1,000」と記録します。
- 次に「商品30,000円を現金で仕入れ」から支払いを現金で行った仕訳だと判断します。
- 現金の支払いは「現金の減少」です。
- 現金は「資産」の勘定科目なので、減少した時には貸方に記録します。
- なお、現金の金額は支払いをした金額なので、貸方に「現金¥30,000」と記録します。
- 最後に「仕入」の処理をします。今回は商品の仕入なので「仕入の増加」と判断します。
- 仕入は「費用」の勘定科目なので、増加の場合借方に記録します。
- なお、仕入れの金額は「当店が負担する運賃」とあるので、商品代¥30,000+運賃¥1,000の\31,000です。
- 借方には「仕入¥31,000」と記録します。
- 複式簿記のルール通り、借方と貸方の金額は一致します。
②仕入とは別に「立替金」として独立させる場合の仕訳
例1)商品A¥2,000を掛けで仕入れ、先方負担の送料¥250を現金で立替払いした。
この取引内容は次のように仕訳します。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
立替金 仕入 |
250 2,000 |
現金 買掛金 |
250 2,000 |
【仕訳の解説】
- 「仕入」「送料 」が問題文にあるので「仕入諸掛」を意識し、分かりやすいところから仕訳をしていきます。
- 「¥250を現金で立替払いした」から「現金で¥250を支払った」「¥250を立替えた」の2つの仕訳を行うと判断します。
- 「現金で¥250を支払った」は「現金の減少」と判断します。
- 現金は「資産」の勘定科目なので、減少した場合には貸方に記録します。(現金¥250を貸方に記入)
- 「¥250を立替えた」は勘定科目「立替金」で処理します。(立替金の詳細は強化学習1-●で解説)
- 立替えた場合は「立替金の増加」と判断します。
- 立替金は「資産」の勘定科目なので増加の場合には借方に記録します。(立替金¥250を借方に記入)※立替えたお金は後で返してもらえます。つまり、将来お金を受取る権利です。よって立替金は資産の勘定科目と判断します。
- 「掛けで仕入れ」から「買掛金の増加」と判断します。
- 買掛金は「負債」の勘定科目なので、増加した場合には貸方に記録します。(買掛金¥2,000を貸方に記入)
- 最後に「仕入」の処理をします。今回は「仕入時の送料」が問題文にありますが、「先方負担の送料」「立替え払い」の文字があるので、単に商品代金\2,000だけを「仕入」で処理すればよいと判断します。
- 仕入は「仕入の増加」と判断します。
- 仕入は「費用」の勘定科目なので、増加の場合は借方に記録します。(「仕入¥2,000」を借方に記入)
- 複式簿記のルール通り借方と貸方の金額は一致します。
例2)商品B¥20,000を掛けで仕入れ、先方負担の運賃¥315を当店が現金で支払った。
この取引内容は次のように仕訳します。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
立替金 仕入 |
315 20,000 |
現金 買掛金 |
315 20,000 |
【仕訳解説】
- 「仕入」「運賃」が問題文にあるので「仕入諸掛」を意識し、分かるところから仕訳をしていきます。
- 「先方負担の運賃¥315を当店が現金で支払った」から「¥315を現金で支払った」「先方負担の運賃¥315を立替えた」の2つの仕訳をすると判断します。
- 「¥315を現金で支払った」は「現金の減少」と判断します。
- 現金は「資産」の勘定科目なので減少の場合には貸方に記録します。(現金\315を貸方に記入)
- 「先方負担の運賃¥315を立替えた」は勘定科目「立替金」で処理します。(立替金の詳細は強化学習1-●で解説)
- 立替えた場合は「立替金の増加」と判断します。
- 立替金は「資産」の勘定科目なので増加の場合には借方に記録します。(立替金\350を借方に記入)※立替えたお金は後で返してもらえます。つまり、将来お金を受取る権利です。よって立替金は資産の勘定科目と判断します。
- 「掛けで仕入れ」から「買掛金の増加」と判断します。
- 買掛金は「負債」の勘定科目なので、増加した場合には貸方に記録します。(買掛金¥20,000を貸方に記入)
- 最後に「仕入」の処理をします。今回は「先方負担の運賃」が問題文にありますが、「先方負担」「当店が現金で支払った」の文字から運賃は立替えているので、単に商品代金だけを「仕入」で処理すればよいと判断します。
- 仕入は「仕入の増加」と判断します。
- 仕入は「費用」の勘定科目なので、増加の場合は借方に記録します。(仕入¥20,000を借方に記入)
- 複式簿記のルール通り借方と貸方の金額は一致します。
売上諸掛の詳細と仕訳
売上諸掛(しいれしょがかり)とは?
売上諸掛とは
商品を売り上げたときに商品代金以外に発生する費用のこと
売上諸掛の仕訳のポイント
販売(売り上げ)の際に発生する諸掛の処理は次の3パターンになります。
- 「売掛金」に含める
- 売掛金とは別に「立替金」として独立させる
- 売掛金とは別に「発送費」「荷造運賃」「荷造費」として独立させる
売上諸掛の仕訳を例題とともに理解する
①「売掛金」に含める場合の仕訳
例1)商品¥5,000を売り上げ、代金は掛けとした。なお、先方負担の発送運賃¥300は現金で支払った。この代金は、売掛代金に含めて請求することとした。
この取引内容は次のように仕訳します。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
売掛金 | 5,300 | 現金 売上 |
300 5,000 |
【仕訳解説】
- 問題文に「売り上げ」「発送運賃」があるので売上諸掛を意識し、分かりやすいところから仕訳をしていきます。
- 「¥5,000を売り上げ」から「売上の増加」と判断します。
- 売上は「収益」の勘定科目なので、増加の場合は貸方に記録します。(売上\5,000を貸方に記入)
- 問題文の「先方負担の発送運賃¥300は現金で支払った」から「発送運賃\300が費用としてかかった」「\300を現金で支払った」の2つの処理をすると判断します。
- まずは、分かりやすい現金の支払いを処理します。現金の支払いは「現金の減少」と判断します。
- 現金は「資産」の勘定科目なので、減少の場合は貸方に記録します。(現金\300を貸方に記入)
- 「発送運賃\300が費用としてかかった」は、問題文に「この代金は、売掛代金に含めて請求することとした。」とあるので、「売掛金」で処理すると判断します。
- よって、今回の取引で「売掛金」で処理する金額は、商品¥5,000+発送運賃¥300の¥5,300となります。
- 掛けでの売り上げは「売掛金の増加」と判断します。
- 売掛金は「資産」の勘定科目なので、増加の場合は借方に記録します。(売掛金¥5,300を借方に記入)
- 複式簿記のルール通り借方と貸方の金額は一致します。
②売掛金とは別に「立替金」として独立させる場合の仕訳
例1)取引先に商品¥30,000を掛け販売した。また、商品の発送に際し運送業者に発送費として現金¥2,800を支払った。なお、商品発送にかかった経費は売掛金に含めずに立替金で処理することとする。
この取引内容は次のように仕訳します。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
立替金 売掛金 |
2,800 30,000 |
現金 売上 |
2,800 30,000 |
※仕入れの解説に合わせた並びで記載しています。科目と金額がセットなら上下が逆でも問題ありません。
【仕訳解説】
- 「販売」「発送費」が問題文にあるので売上諸掛を意識し、分かりやすいところから仕訳をしていきます。
- 「現金¥2,800を支払った」から「現金の減少」と判断します。
- 現金は「資産」の勘定科目なので、減少した場合は貸方に記録します。(現金\2,800を貸方に記入)
- 「発送にかかった経費は売掛金に含めずに立替金で処理」から「立替金」の増加と判断します。(立替金の詳細は強化学習1-●で解説)
- 立替金は「資産」の勘定科目なので、増加した場合は借方に記録します。(立替金¥2,800を借方に記入)
- 「¥30,000を掛け販売した」から「売掛金の増加」と「売上の増加」の2つの処理をすると判断します。
- 売掛金は「資産」の勘定科目なので、増加の場合は借方に記録します。(売掛金¥30,000を借方に記入)
- 売上は「収益」の勘定科目なので、増加の場合は貸方に記録します。(売上¥30,000を貸方に記入)
- 複式簿記のルール通り借方と貸方の金額は一致します。
③売掛金とは別に「発送費」「荷造運賃」「荷造費」として独立させる場合の仕訳
例1)得意先に商品¥8,000を掛けで販売し発送した。発送に際し、運送業者に現金で¥500を支払った。なお、発送費は当社が負担し、発送費勘定を使って処理することとした
この取引内容は次のように仕訳します。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
発送費 売掛金 |
500 8,000 |
現金 売上 |
500 8,000 |
【仕訳解説】
- 「販売」「発送費」が問題文にあるので売上諸掛を意識し、分かりやすいところから仕訳をしていきます。
- 発送費は勘定科目「発送費」を使うよう指示があるので「発送費の増加」で処理します。
- 発送費は「費用」の勘定科目なので、増加は借方に記録します。(発送費¥500を借方に記入)
- 次に「運送業者に現金で¥500を支払った」から「現金の減少」と判断します。
- 現金は「資産」の勘定科目なので、減少の場合貸方に記録します。(現金¥500を借方に記入)
- 次に「商品¥8,000を掛けで販売」から「売掛金の増加」と「売上の増加」の2つの処理をすると判断します。
- 売掛金は「資産」の勘定科目なので、増加の場合は借方に記録します。(売掛金¥8,000を借方に記入)
- 売上は「収益」の勘定科目なので、増加の場合は貸方に記録します。(売上¥8,000を貸方に記入)
- 複式簿記のルール通り借方と貸方の金額は一致します。
まとめ