基礎学習

<基礎学習2>簿記の「基礎用語」と「全体の流れ」を理解する【日商簿記3級】

基礎学習2では、簿記3級合格に向けて学習を進めるうえで押さえておきたい

  • 「簿記の基礎用語」
  • 「簿記の全体の流れ(一連の流れ)」

を解説していきます。

全体の流れや用語はもう理解しているよ!という方は、次の<基礎学習3>簿記の最終目的と「貸借対照表・損益計算書」を理解するから読み始めるか、総合目次ページから知りたい情報を探して読み進めてください。

簿記は「会計期間」で区切って記録する

基礎学習1の復習ですが、

  1. 簿記は、取引の記録を残す技術と一連の手続きのこと
  2. 日商簿記3級は「どう記録するか」を学ぶ学問
  3. 簿記は会計で報告するために必要な資料を作成するので会計の一部

と学びましたね。

さて、取引の記録を残すのが簿記ですが、事業が続く限り記録を残す必要があります。

ただ、簿記で作成する資料は「報告する」ために必要なものなので、ある期間の状況がどうだったのか数字で見える化する必要があります。

この「ある期間」が会社によって1ヵ月や半年などばらばらでは、正しく比較ができません。

そこで、

1年を一区切りとした「会計期間(かいけいきかん)」

を利用します。

会計期間の始まりの日と終わりの日は、法人であれば自由に選べますが多くの場合4月1日始まり3月31日終わりの1年を選択しています。

個人事業主の場合は1月1日から12月31日が会計期間と決められています。

上のイラストは、4月1日から3月31日の1年を会計期間とした場合の、事業を始めた1期目から3期目までの会計期間を表しています。

会計期間は1年と解説しましたが、個人事業主が11月1日に事業を始めた場合には1期目の会計期間は、11月と12月の2カ月になります。

また、法人企業の場合会計期間を変更する場合にもひとつの会計期間が1年ではなくなることもあります。

ただ、日商簿記3級では会計期間は1年と覚えておけばOKです。

【基礎用語】当期・前期・今期とは?

日商簿記試験では「前期」や「次期」といった用語が出てきます。

社会人の方にとっては当たり前のことだと思いますが、現在が2期目の会計期間だとした場合それぞれの会計期間をどのように呼ぶのか知っておきましょう。

  • の会計期間:「当期(今期)」
  • の会計期間:「前期」
  • の会計期間:「次期(来期)」

さて、「会計期間」とともに一緒に覚えておきたい重要な簿記用語があります。

次は会計期間と一緒に覚えたい「期首(きしゅ)・期末(きまつ)・期中(きちゅう)」について解説します。

【基礎用語】期首・期末・期中とは?

期首(きしゅ)とは?

※上のイラストは、4月1日はじまりの会計期間の場合

 

期首とは、会計期間の最初の日のこと

会計期間が4月1日始まりなら、

  • 期首=4月1日

会計期間が1月1日始まりなら、

  • 期首=1月1日

となります。

「期首」という言葉は、日商簿記3級で出題される問題を解くカギになる用語です。必ず覚えておきましょう!

期末(きまつ)とは?

※上のイラストは、4月1日はじまりの会計期間の場合

期末とは、会計期間の最後の日のこと

会計期間が4月1日から3月31日なら、

  • 期末=3月31日

会計期間が1月1日から12月31日なら、

  • 期末=1月1日

となります。

期中(きちゅう)とは?

※上のイラストは、4月1日はじまりの会計期間の場合

期中とは、期首と期末の間の期間のこと

時々、期中に期首と期末は含まれるのか含まれないのかという疑問を見かけますが、日商簿記3級を受けるうえでは特に不要な知識になります。

【基礎用語】決算・決算月・決算日とは?

※上のイラストは、4月1日はじまりの会計期間の場合

決算(けっさん)とは?

決算を最も端的に言うなら、

決算とは、

「決算書」を作成するための一連の手続き(作業)のこと

ちなみに、日商簿記3級で出題される決算書は、

  1. 貸借対照表(たいしゃくたいしょうひょう)
  2. 損益計算書(そんえきけいさんしょ)

の2種類です。

決算で行う手続きは、本学習の決算手続きの(期末の手続き)をイラストで理解で解説しています。

残りの基礎用語「決算月」と「決算日」は次の通りです。

決算月(けっさんづき)・決算日(けっさんび)とは?


※上のイラストは、4月1日はじまりの会計期間の場合

決算月とは、
決算を行う月のことで、会計期間の「最終月」のこと

決算日とは、
決算月の最終日、期末と同じく「会計期間の最終日」のこと

さて、会計期間に関連する基礎用語を一通り理解したところで、今度は簿記の3タイプの手続きについて解説していきましょう。

簿記の全体の流れを理解するうえで、押さえておきたいポイントになります。

簿記には大きく分けて3タイプの手続きがある

※上のイラストは、4月1日はじまりの会計期間の場合と

上のイラストにあるように、簿記には大きく分けて3つの手続きがあります。

  1. 「日常(期中)の手続き」
  2. 「決算手続き(期末の手続き)」
  3. 「期首の手続き」

期中の手続きは、毎日・毎週・毎月と言った日々行う作業です。

決算手続き(期末の手続き)は、決算のために行う一連の作業を指します。

期首の手続きは、その名の通り期首に行う作業のことです。

事業を始めた1期目は①「日常(期中)の手続き」と②「決算手続き(期末の手続き)」の2つですが、2期目以降には③の「期首の手続き」を含めた3つの手続きが行われます。

簿記用語として利用されているのは「決算手続き」だけになります。

他の2つの用語は、私が簿記の全体の流れを理解する際に、こうやって説明してくれたら分かりやすかったのに、という名称です。

では、それぞれの手続きでどのようなことが行われるのか解説していきましょう。

「日常(期中)の手続き」をイラストで理解

※上のイラストは、4月1日はじまりの会計期間の場合

上のイラストが「日常(期中)の手続き」になります。

  1. 「取引」が発生したら、
  2. 「仕訳」を行い、
  3. 『仕訳帳(しわけちょう)』または『伝票(でんぴょう)』に記録し、
  4. 『総勘定元帳(そうかんじょうもとちょう)』に転記を行います。

①~③は取引が発生するたびに日々行い、④の総勘定元帳への転記は基本的に月に1回行う作業になります。

商品を売ったり仕入れたり、社員に給料を払ったりする事業のために行うやり取りを「取引」といい、取引内容をあるルールにしたがって整理することを「仕訳」と言います。

取引については基礎学習4で、仕訳については基礎学習6で詳しく解説します。

ちなみに、③の『仕訳帳』と『伝票』のどちらに記録するかは、自由に選択ができます。

実務では『伝票』を使う方が多いですが、日商簿記3級の中では『仕訳帳』が主流として扱われます。

なお、③で『仕訳帳』と『伝票』のどちらを選んだとしても『総勘定元帳』に転記をします。

仕訳帳と総勘定元帳については基礎学習9の中で、伝票については基礎学習10で詳しく解説します。

今回の基礎学習2では、日常(期中)の手続きは4つのことが行われるとなんとなく分かっておけばOKです。

決算手続きの(期末の手続き)をイラストで理解

※上のイラストは、4月1日はじまりの会計期間の場合

上のイラストの内、緑枠で囲った部分が「決算(期末)の手続き」になります。

  1. 『試算表(しさんひょう)』を作成し、
  2. 「決算整理(けっさんせいり)」を行い、
  3. 『精算表(せいさんひょう)』を作成し、
  4. 精算表を元に『貸借対照表』と『損益計算書』を作成し
  5. 「勘定の締め切り」をして、次の期へ備えます。

①~⑤のそれぞれの概要は次の通りです。

①『試算表』の作成

『試算表』は、日常の手続きで作成した『総勘定元帳』の内容を集計し、一覧表にまとめたものです。

→詳細は●●へ

②「決算整理」を行う

「決算整理」は、過去の仕訳と未処理の取引を「今期分」「来期分」の見分けがつくようにに仕訳し直す作業のことです。

※簿記3級では9つの決算整理を理解し身に着ける必要があります。

→詳細は●●へ

③『精算書』の作成

『精算書』は、『貸借対照表』と『損益計算書』を作成する前の下準備用の集計表です。

『精算書』には、①の試算表の集計結果、②の決算整理の結果、④の『貸借対照表』と『損益計算書』に記載する数値をまとめます。

→詳細は●●へ

④『貸借対照表』と『損益計算書』の作成

シンプルに言うなら、『貸借対照表』は決算日時点の財政状態を表す一覧表で、『損益計算書』は会計期間にどれくらい儲けたか損をしたかを表す一覧表です。

→詳細は●●へ

日商簿記3級試験では、①の『試算表』と②の決算整理の内容(決算整理事項)から『貸借対照表』と『損益計算書』を作成する問題が出題されます。

⑤「勘定の締め切り」を行い、次の期へ備える

「勘定の締め切り」は、当期と次期を区別するために総勘定元帳を整理することです。

勘定を締め切るまでにはいくつかの処理を行います。

→詳細は●●へ

さて、5つの概要を解説しましたが、今回の基礎学習2を学んでいる現段階では、決算手続き(期末の手続き)は5つのことが行われるとなんとなく分かっていただければOKです。

それぞれの詳細を学んだり、過去問を解いたりする中でしっかり理解し、身に着けていきましょう!


簿記上の「決算」と実務上の「決算」は違う?

簿記上の決算の手続きはここまでに解説した通りです。
ですが、実務上ではまだ続きがあり、「決算書」をもとに税金の確定申告書を作り、税務署に税務申告をして、税金の納付をします。

ちなみに、法人の税務申告の期限は、原則として決算日から2カ月以内。
個人事業主は、決算日の翌年3月15日になります。

期首の手続きをイラストで理解

※上のイラストは、4月1日はじまりの会計期間の場合

上のイラストの内、ピンク枠で囲った部分、

  1. 「再振分仕訳(さいふりわけしわけ)」

が「期首の手続き」になります。

再振分仕訳

「再振分仕訳」は、決算手続きの「決算整理」時に来期分として仕訳し直した分を、新しい会計期間の始まりの日、期首に当期分とわかるよう仕訳し直すことを言います。

簿記の参考書や問題集では、「決算整理仕訳(けっさんせいりしわけ)の逆を行う」というような表現をされますね。

→詳細は●●へ

基礎学習2では期首に「再振り分け仕訳」を行うことが分かればOKです。

簿記全体の流れのまとめ

さて、上のイラストが簿記3級で知っておきたい「簿記全体」の流れです。

これから、それぞれの手続きをこのサイトや過去問を解く中で、しっかり理解して身に着けていきましょう。

最後に、基礎用語として知っておきたい「勘定科目(かんじょうかもく)」について解説して、基礎学習2は終了となります。

【基礎用語】「勘定科目(かんじょうかもく)」とは?

勘定科目とは?

最も完結に表現するなら

「勘定科目」とは

簿記で使う取引内容につけるネーミング(名称)

です。

日々行われる取引にはいろんなパターンがありますが、それをグルーピングして名称をつけたものが「勘定科目」です。

勘定科目の6つのグループ

簿記3級に登場する「勘定科目」は、必ず6つのグループのいずれかに属します。

勘定科目のグループの定義には様々な説明方法が存在しますが、次の定義で理解するのがおすすめです。

1.「資産」の勘定科目 1または2にあたるもの
1)通貨・預金(=お金)
2)将来、お金やサービスを受け取る権利
例)現金、当座預金、普通預金、当座預金、売掛金など
2.「負債」の勘定科目 将来、お金やサービスを支払う義務
例)買掛金、未払金、借入金など
3.「純資産(資本)」の勘定科目 簿記3級では次の3つ
「資本金」「繰越利益剰余金」「利益準備金」
4.「費用」の勘定科目 儲け(収益)を得るために使われた支出
(会計期間内に使い切ることが前提)
例)仕入、給料、旅費交通費、水道光熱費、備品など
5.「収益」の勘定科目 1または2にあたるもの
1)商品・サービスを提供して得た儲け(収入)
2)収入が増えた理由(原因)そのもの
例)売上、受取利息、受取手数料など
6.「臨時(その他)」の勘定科目 簿記3級では次の2つ
「現金過不足」「貸倒引当金」「減価償却費累計額」「損益」

勘定科目は一気に暗記する必要はなく、仕訳の過去問を解く中で都度、理解し覚えていくことがおススメです。

本サイトでは、基礎学習8~13で勘定科目の詳細を解説しています。

例題から勘定科目を理解する

勘定科目をもう少し理解してもらうために、取引の例題を使って解説していきましょう。

例題

1,000円の商品Aを仕入れ、支払いは現金で行った

という取引の場合、使用する勘定科目はこのようになります。

商品Aを仕入れた:勘定科目は「仕入」

支払いは現金:勘定科目は「現金」

取引内容を勘定科目に変更し、「複式簿記(ふくしきぼき)」と呼ばれる記録方法を使って、次のように表記します。

借方 貸方
仕入 1,000 現金 1,000

複式簿記については基礎学習5で詳しく解説します。

まとめ

さて、簿記の「基礎用語」と「全体の流れ」はなんとなくで理解できたでしょうか。

はじめは聞きなれない用語ばかりで拒絶反応が起こるかもしれません。

ですが、よく分からないなんとなくの感情に流されては独学合格は難しくなります。

簿記3級は決して難しい内容ではありません。

「なんとなく嫌」というあいまいな感情に惑わされず、できるだけ多くの過去問を解きながら理解を深めていくことができれば独学でも合格が可能です。

めげずに頑張りましょう!

もしどうしても、感情に流されてしまうなら、こちらの記事で独学にするか通信講座やスクールにするか判断してみてください。

では、次の基礎学3で簿記のゴール、最終目的ついて理解していきましょう。

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