基礎学習

<基礎学習4>簿記のはじまり「簿記上の取引」を理解する【日商簿記3級】

「取引なんて簡単な言葉、分かってるよ!」と思って安心してはいけません。簿記で使う取引」は、日常生活で使う「取引」の意味と少し違います

だからこそ、あえてタイトルに「簿記上の」という言葉を使っているわけなのです。

さて、ひとつ前の基礎学習3では簿記のゴール「貸借対照表・損益計算書」を学びましたが、基礎学習4ではゴールの反対、簿記のスタートである「取引」を理解していきます。

「取引」が発生して、初めて簿記がはじまるのです。

では、「簿記上の取引」を解説していきましょう。

そもそも、日常の取引」とは?

まず、「簿記上の取引」を解説する前に、日常で使われる「取引」について認識を合わせておきましょう。

日常で使われる「取引」は、

取引:[名](スル)
1) 商人と商人、または、商人と客との間で行われる経済行為。
2 )互いに利益を得られるよう交渉すること。
(出典:小学館デジタル大辞泉について

となりますが、ちょっとわかりにくいですよね。

1)の意味は、
商品やサービスの売買で金品を受け取ることや契約書を交わすこと。
物々交換なども含まれます。

2)の意味は、
「裏取引」とか「犯人と取引した」なんて言葉を使う時の取引ですね。

日常生活で使う取引は幅広い意味を持ちますが、簿記上の取引は限定されます。

では、次に「簿記上の取引」について解説していきましょう。

簿記上の「取引」とは?

「簿記上の取引」は、次の5項目のいずれかが増減することです。

  1. 資産
  2. 負債
  3. 純資産(資本)
  4. 費用
  5. 収益

さて、この5項目をみて何かを思い出しませんか?

ひとつ前の基礎学習3で学んだ「貸借対照表」と「損益計算書」を構成する要素と同じですよね。

簿記のスタートは「取引」の発生なので、取引の結果を決算書の「貸借対照表」と「損益計算書」でまとめているわけなのです。

日商簿記3級合格のためは、「簿記上の取引が何を指すのか」覚えておく必要があります。

ただ、今は一生懸命覚えようとしなくて大丈夫です。「仕訳」を学ぶ中で何が取引にあたるのかは、自然と身についていきます。

取引を丸暗記しようとせず、1問でも多く「仕訳」の過去問や予想問題を解くことが取引を理解するうえでとても重要です。

ここまでのポイント

簿記上の取引は、「資産」「負債」「純資産(資本)」「費用」「収益」のいずれかが増減すること

決算書(貸借対照表と損益計算書)は、簿記上の取引5項目で構成されている

さて、この後は日常の取引と簿記上の取引の違いをもう少し詳しく見ていきましょう。

「簿記上の取引」と「日常の取引」の違い

最後に簿記上の取引をもう少し理解するために、日常の取引とは異なる例をいくつか紹介しておきます。

日常生活では取引にならないのに簿記上では取引になる例と、その逆の日常生活では取引になるのに、簿記上では取引にならない例を紹介します。

日常生活では取引にならない、でも簿記上では取引になるとは?

例えば、日常生活で現金を盗まれたとしても、それは取引とは言いませんよね。

他にも、建物が火災で焼失しても、それも取引とは言いません。

ですが、簿記上の取引では今挙げた例は取引になるのです。

もちろん、簿記上の取引には個人的に所有されているものは含まれません。

事業として所有しているものが対象です。

さて、なぜ先ほど例を挙げたことが簿記上では取引になるかと言えば、「資産」「負債」「資本(純資産)」「費用」「収益」の5つの項目の増減に関わるからです。

現金は資産になります。

資産である現金を盗まれたということは、資産の減少になるので、簿記上の取引になります。

建物もオフィスやお店であれば資産になります。

そうすると資産である建物が火災で焼失したなら、資産の減少になるため簿記上の取引になるのです。

日常生活では取引、でも簿記上では取引にはならないとは?

例えば、日常生活で契約書を交わしたら、それは取引が成立したと認識しますよね。

ですが、契約書を交わすは行為は、「資産」「負債」「資本(純資産)」「費用」「収益」の5項目のいずれかの増減に当てはまらないので、簿記上では取引にならないのです。

ちなみに、契約書を交わした後に、現金を受け取ったり、商品やサービスを提供した時に初めて5項目の増減に当てはまり、簿記上の取引となるのです。

簿記を学び始めたばかりだと、何が簿記上の取引になるのかに迷います。

ですが、これも慣れなのでたくさん問題を解くことが重要です。

まとめ

さて、簿記のはじまり「簿記上の取引」はご理解いただけたでしょうか。

簿記を学びはじめたばかりの今は、なんとなくの理解でも大丈夫です。

この先の学習を読み進たり実際に仕訳問題を解いたりしていく中で理解が深まっていきます。

基礎学習4のポイント

簿記上の取引とは「資産」「負債」「純資産(資本)」「費用」「収益」の5項目のいずれかが増減することすべて

5項目の増減であれば、日常では取引にならないような現金の盗難や建物の焼失も取引になる

5項目の増減を伴わないものは簿記上の取引にならない

決算書は、簿記上の取引5項目で構成されている

では、次の基礎学習5で簿記の記録方法である「単式簿記と複式簿記」について理解していきましょう。

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