強化学習

強化学習1-4 約束手形の詳細と仕訳方法(支払手形・受取手形)【日商簿記3級】

強化学習1-4では、現金の代わりになる支払方法「約束手形」について解説していきます。

まずは、「手形」を理解する

そもそも、手形(てがた)とは?

簿記3級受験者のために最も簡単に伝えるなら次の通りです。

手形とは、
現金の代わりに支払方法(決済方法)として利用される証券のうち、
受取り後、指定の期日まで換金できないもののこと

手形には「約束手形(やくそくてがた)」と「為替手形(かわせてがた)」の2種類がある
※証券とは、財産法上の権利・義務について記載をした紙片のこと

取引のたびに多額の現金を持ち運ぶわずらわしさや盗難のリスクを回避するためにビジネス(商売)では現金の代わりになる支払方法が利用されます。

そのひとつが手形です。

日商簿記3級で出題される手形は?

手形には「約束手形」と「為替手形」の2種類がありますが、日商簿記3級で出題される手形は、約束手形です。

なお、日本国内で流通する手形のほぼすべてが約束手形です。

なので、強化学習1-3では約束手形を詳しく解説していきます。

【約束手形と為替手形の違い】
「約束手形」と「為替手形」の違いを簡単にいうなら、登場人物の数の違いです。
「約束手形」:払う人と受け取る人の2者間の取引
「為替手形」:は払う人、払うことを指図する人、受け取る人の3者

手形と小切手の違いは?

手形と小切手はともに現金に代わる支払方法ですが、大きな違いは換金できる日の違いです。

名称 換金できる日 役割
手形 手形に指定された日 現金の代わりに支払方法(決済方法)として利用される証券
小切手 受取り後すぐ

「約束手形(受取手形・支払手形)」の詳細

ここからは2つの手形のうち、日商簿記3級で出題される「約束手形」について解説していきます。

約束手形(やくそくてがた)とは?

簿記3級受験者のために最も簡単に伝えるなら次の通りです。

約束手形とは、
2者間の取引に使用する手形のこと

※手形とは、現金の代わりに支払方法(決済方法)として利用される証券のうち、受取り後、指定の期日まで換金できないもののこと

約束手形は小切手とよく似ていますが、約束手形は支払期日まで換金できません。(小切手は受け取ったらすぐ換金できる)

約束手形は、一般的に「売掛金」や「買掛金」よりも支払期日を先延ばしにできます。そのため、手元の現金が少ない場合などでも、支払期日まで余裕を持ってお金の準備ができるます。

約束手形と一緒に使われる用語

簿記3級受験のために覚えておきたい用語は次の通りです。
問題文に使われるので意味が分かるようにしておくことが大切です。

約束手形と一緒に使われる用語
振出人(ふりだしにん)
/支払人(しはらいにん)
手形を発行する人のこと
名宛人(なあてにん)
/
受取人(うけとりにん)
手形を受け取る人
支払期日(しはらいきじつ)
/
満期日(まんきび)
代金を支払う期限
振り出す 手形を発行すること

「約束手形」は振出人によって勘定科目が変わる

約束手形は、振出人が誰かによって使用する勘定科目が変わります。

名称 振出人 勘定科目 勘定科目詳細
約束手形 自分・自社 支払手形
(しはらいてがた)
自分が振り出した約束手形を表す勘定科目将来、お金を支払う義務を表すので「負債」グループの勘定科目
他人・他社 受取手形
(うけとりてがた)
他人が振り出した約束手形を表す勘定科目
将来、お金を受取る権利を表すので「資産」グループの勘定科目

「約束手形(受取手形・支払手形)」の仕訳方法

ここからは、約束手形の仕訳の方法について解説していきいます。

約束手形の仕訳のタイミング

日商簿記3級で出題される「約束手形」の仕訳のタイミングは次の4つです。

  1. (自分で)約束手形を振り出したとき
  2. (自分が)振り出した約束手形の期日以降に決済がされたとき
  3. (他人が振り出した)約束手形を受け取ったとき
  4. (他人が振り出した)受け取った約束手形の期日以降に決済したとき

約束手形の仕訳タイミングには、「裏書譲渡したとき」と「割引したとき」がありましたが、2019年から 2級以上での出題に変更になりました。

過去問の中で裏書や割引が出てきてもパスでOKです。

約束手形の仕訳で使う勘定科目(支払手形・受取手形)

すでに解説した通り、「約束手形」は振出人が誰かによって使用する勘定科目が異なります。

名称 振出人 勘定科目
約束手形 自分・自社 支払手形(しはらいてがた)
他人・他社 受取手形(うけとりてがた)

勘定科目「支払手形」「受取手形」の所属グループ

名称 振出人 勘定科目 勘定科目の所属フループ
約束手形 自分・自社 支払手形
(しはらいてがた)
将来、お金を支払う義務を表すので「負債」グループの勘定科目
他人・他社 受取手形
(うけとりてがた)
将来、お金を受取る権利を表すので「資産」グループの勘定科目

【支払手形と受取手形の勘定科目名を間違えないために】

約束手形は後払いをする手段なので、
基順を「自分」にして、お金を支払う義務のか受け取る権利なのかを考えましょう。

  • 自分がお金を支払う義務=支払手形
  • 自分がお金を受け取る権利=受取手形

間違えて、相手が支払う義務なのか受け取る権利なのかと考えてしまうと逆転してしまうので、「自分を基準」がポイントです。

勘定科目「支払手形」「受取手形」の借方貸方

勘定科目「受取手形」は、「資産」の勘定科目なので、複式簿記の借方貸方は次のようになります。

名称 勘定科目 所属グループ 増加・減少 借方・貸方
約束手形 支払手形 負債 負債の増加 必ず、貸方に記録
負債の減少 必ず、借方に記録
受取手形 資産 資産の増加 必ず、借方に記録
資産の減少 必ず、貸方に記録

仕訳に慣れるまでは、基礎学習6で学んだこの図をメモやノートに書くのがおすすめです。


これが何か思い出せない方は、基礎学習6を後で復習してみてください。

勘定科目「支払手形」「受取手形」の仕訳を例題とともに理解する

それでは、例題を使って仕訳を理解していきましょう。

①約束手形を振り出したとき
:支払手形(負債)が増えるので右の貸方

基礎学習6で学んだ通り負債の増加は必ず貸方に記録をします。

例1)B商店から商品¥280,000を仕入れ、商品代金をB商店を名宛人とする約束手形を振り出して支払った。

この取引内容は次のように仕訳します。

借方科目 金額 貸方科目 金額
仕入 280,000 支払手形 280,000

【仕訳の解説】

  • 商品を仕入れているので勘定科目「仕入」を使し、「仕入の増加」と判断します。(勘定科目「仕入」は強化学習1-●で解説します)
  • 仕入は「費用」の勘定科目なので、増加の場合には借方に記録します。
  • 「B商店を名宛人とする約束手形を振り出して支払った」から、「支払手形の増加」と判断します。
  • 支払手形は「負債」の勘定科目なので、増加の場合借方に記録します。
  • 複式簿記のルール通り借方と貸方の金額は一致します。

②振り出した約束手形の期日以降に決済がされたとき
:支払手形(負債)が減るので左側の借方

基礎学習6で学んだ通り負債の減少は必ず借方に記録をします。

例1)A商社に振り出していた約束手形¥300,000の支払期日が到来し、当座預金口座から支払われた。

この取引内容は次のように仕訳します。

借方科目 金額 貸方科目 金額
支払手形 300,000 当座預金 300,000

【仕訳の解説】

  • 「振り出していた約束手形」から勘定科目「支払手形」を使用すると判断します。
  • 「当座預金口座から支払われた」とあるので、「支払手形の減少」と判断します。支払手形は将来お金を支払う義務なので、お金を支払った時点でその義務はなくなるので、減少させます。
  • 支払手形は「負債」の勘定科目なので、減少の場合は借方に記録します。
  • 「当座預金口座から支払われた」から「当座預金の減少」と判断します。
  • 当座預金は「資産」の勘定科目なので、減少の場合には貸方に記録します。
  • 複式簿記のルール通り借方と貸方の金額は一致します。
例2)約束手形¥150,000の決済により、同額が当座預金口座から引き落とされた。

この取引内容は次のように仕訳します。

借方科目 金額 貸方科目 金額
支払手形 150,000 当座預金 150,000

【仕訳の解説】

  • 「当座預金口座から引き落とされた」から「当座預金の減少」と判断します。
  • 当座預金は「資産」の勘定科目なので、減少の場合貸方に記録します。
  • 「約束手形」と「当座預金口座から引き落とされた」から勘定科目「支払手形」を使用すると判断します。
  • 「引き落とされた」とあるので、「支払手形の減少」と判断します。支払手形は将来お金を支払う義務なので、お金を支払った時点でその義務はなくなるので、減少させます。
  • 支払手形は「負債」の勘定科目なので、減少の場に合は借方に記録します。
  • 複式簿記のルール通り借方と貸方の金額は一致します。

③約束手形を受け取ったとき
:受取手形(資産)が増えるので左側の借方

基礎学習6で学んだ通り資産の増加は必ず借方に記録をします。

例)C商店から売掛代金として同店振出の約束手形¥300,000を受取った

この取引内容は次のように仕訳します。

借方科目 金額 貸方科目 金額
受取手形 300,000 売掛金 300,000

【仕訳の解説】

  • 「同店振出の約束手形を受取った」から、他人振出の約束手形を受け取ったと判断し、勘定科目「受取手形」を使用します。
  • 受取っているので「受取手形の増加」と判断します。
  • 受取手形は「資産」の勘定科目なので、増加の場合は借方に記録します。
  • 「売掛代金」とあるので勘定科目「売掛金」を使用します。(勘定科目「売掛金」は強化学習1-●で解説)
  • 売掛代金として約束手形を受取っているので「売掛金の減少」と判断します。売掛金は将来お金を受取る権利なので、代金が支払われたら減少させる必要があります。
  • 売掛金は「資産」の勘定科目なので、減少の場合は貸方に記録します。
  • 複式簿記のルール通り借方と貸方の金額は一致します。

④受け取った約束手形の期日以降に決済したとき
:受取手形(資産)が減るので右側の貸方

基礎学習6で学んだ通り資産の減少は必ず貸方に記録をします。

例)A商店より商品の売り上げの対価として受け取っていた同店振出の約束手形¥120,000につき、手形期日である本日、当座預金口座に入金があったと連絡を受けた。

この取引内容は次のように仕訳します。

借方科目 金額 貸方科目 金額
当座預金 120,000 受取手形 120,000

【仕訳の解説】

  • 「当座預金口座に入金があった」から当座預金の増加と判断します。当座預金は資産の勘定科目なので、増加の場合は借方に記録します。
  • 「同店振出の約束手形」から勘定科目は「受取手形」を使用すると判断し、支払期日に入金があったことから、「受取手形の減少」の処理をします。
  • 受取手形は資産の勘定科目なので、減少の場合は借方に記録します。
  • 複式簿記のルール通り借方と貸方の金額は一致します。
  • なお、「売り上げの対価として受け取っていた」は過去に処理されていることなので、「売掛金」の処理をする必要はありません。
  • 複式簿記のルール通り借方と貸方の金額は一致します。

強化学習●のポイント

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では、次の強化学習●で*****習得していきましょう。

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