部署や人数の多い企業では「小口現金(こぐちげんきん)」を
目次
小口現金(こぐちげんきん)とは?
最も端的にいうなら、
小口現金とは、
企業が日常的に発生する支払用に各部署の担当者に前もって預ける現金のことで、資産のグループに属する勘定科目
です。
個人事業や小さな企業では、各個人が必要な時に経理部に申請して現金を受け取ることも容易かもしれません。
ですが、企業の規模が大きくなると部署も従業員増え、管理する金額や手間が増えていきます。
そこで、各部署に対してある程度の現金を先に預ける「小口現金」が必要になります。
ちなみに、小口現金を使用しない個人事業や企業も存在します。
小口現金に関わる登場人物
小口現金には複数の担当者が関わります。小口現金に関わる登場人物についてまずは解説していきましょう。
小口現金全体を管理する担当者
小口現金全体を管理する担当者のことを、
- 会計係(かいけいがかり)
と呼びます。
一般的に会計係は経理部(経理課)に所属します。
会計係から小口現金を受け取る各部署の担当者
会計係から小口現金を受け取る各部署の担当者を次の3つのいずれかで呼びます。
- 小口係(こぐちががり)
- 用度係(ようどがかり)
- 小払係(こばらいがかり)
小口現金の運用制度は2タイプ
小口現金の運用制度には次の2タイプが存在します。
- 定額資金前渡制(ていがくしきんまえわたしほう)
(別名:インプレスト・システム) - 不定額資金前渡法(ふていがくしきんまえわたしほう)
(別名:随時補給法)
2タイプの運用方法が存在しますが、日商簿記3級で出題されるのは①の定額資金前渡制(インプレスト・システム)のみです。
ということで、②のことは忘れて、①の定額資金前渡制(インプレスト・システム)だけしっかり理解していきましょう。
定額資金前渡制/インプレスト・システムの詳細
定額資金前渡制/インプレスト・システムとは?
定額資金前渡制(インプレスト・システム)とは、
はじめに一定期間に必要となるだろう金額を小口係に前渡しし、
その後は一定期間終了時に小口係から報告された使用額を補充する方法。
です。
ちなみに、一定期間は、1週間や1ヵ月など自由に設定できます。
はじめに渡す金額は各部署ごとに期間中に必要となる金額を見積もって渡します。
【図解】定額資金前渡制/インプレスト・システムの仕組み(流れ)
図を作成して貼る
定額資金前渡法は次の順序で行われる。
(資金の前渡し)一定期間に必要な資金を見積り、会計係が用度係に資金を渡す。小切手で渡した場合は用度係が換金して現金にする
(小口の支払い)用度係は換金した現金で日常の取引で必要になる小口の支払いを行う。その際、小口現金出納帳に支払明細を記帳して管理する
(報告)一定期間末に用度係はその期間に支払った小口現金の明細を会計係に報告する
(小口現金の補給)会計係が用度係から報告を受けた金額と同額の資金を用度係に渡して小口現金の補給を行う
図の解説をテキストで
小口現金の処理方法(仕訳)
小口現金の仕訳は会計係が行います。
よって、小口係が従業員に支払いをした際には、仕訳を行ないません。
小口係は、仕訳の代わりに「小口現金出納帳」に記録を残します。(小口現金出納帳の記録方法は、強化学習〇で解説します。)
①会計係が小口現金を前渡した時の仕訳(会計係→小口係)
会計係は小口現金を小口係に小切手を振り出して渡します。
例)定額資金前渡制(インプレスト・システム)により、小切手5,000円を振り出して、小口現金係に前渡した。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
小口現金 | 5,000 | 当座預金 | 5,000 |
考え方
STEP1)取引内容と金額の増減を抜き出す
- 小口現金係に前渡した
→会計係として管理している小口現金が5,000円増えた - 小切手5,000円を振り出して
→小切手振り出しは当座預金5,000円の減少
※
STEP2)取引内容を勘定科目に変更
- 小口現金が5,000円増えた
小口現金勘定科目は小口現金なので
→小口現金5,000円増加 - 当座預金5,000円の減少