強化学習

<強化学習1-●>「現金過不足」の詳細と仕訳【日商簿記3級】

帳簿に記録していた現金の残高(帳簿残高)と実際に手元にある現金の残高(実際有高)が一致しないと気付いた時に初めて「現金過不足」という勘定科目が使用されます。

現金過不足は、日商簿記3級試験で配点の高い問題の中の一部として出題されることが多くあります。

現金過不足の仕訳を間違うと連鎖的に他の部分も違ってしまい、せっかくの高得点問題で点数を取り損ねてします。

そこで、現金過不足の仕訳は特にしっかり押さえておく必要があります。

現金過不足は、他の勘定科目と違って仕訳のタイミングや処理方法が特殊なので、コツをしっかりとつかまないと混乱してしまいます。

強化学習1-2では、現金過不足の仕訳のコツをしっかり解説していきますので、読み終えるころには、現金過不足の仕訳が得意になっていることでしょう!

では、早速解説していきましょう。

勘定科目「現金過不足(げんきんかふそく)」の詳細

勘定科目「現金過不足」とは?

勘定科目「現金過不足」とは、
帳簿上の現金残高と実際の現金残高が一致せず、原因が不明な場合に一時的に使用する勘定科目

勘定科目「現金過不足」の所属グループ

勘定科目「現金過不足」は「その他(臨時)」の勘定科目に属します。

現金過不足に関する用語

帳簿に記録した現金の残高を「帳簿残高(ちょうぼざんだか)」といい、
実際の現金の金額を「実際有高(じっさいありだか)」と言います。

現金過不足の仕訳タイミング

勘定科目「現金過不足」の仕訳タイミングは次の3つです。

  1. 帳簿残高と実際有高が一致しないと気づいたとき
  2. 一致しない理由が判明したとき
  3. 原因が不明なまま決算を迎えたとき

それぞれのタイミング別に仕訳の方法を解説していきましょう。

現金過不足の仕訳の詳細(手順と例題解説)

①帳簿残高と実際有高が一致しないと気付づいたとき

仕訳の手順

帳簿残高と実際有高が一致しない、ズレがあると気づいたときは、次の手順で仕訳を行います。

【現金過不足の仕訳手順:①帳簿残高と実際有高が一致しないとき】

STEP1|
帳簿上の現金残高を「増やす」のか「減らす」のか判断する


STEP2|
帳簿上の「現金」の借方貸方を確定し、記録する


STEP3|
帳簿上の現金の反対側に「現金過不足」を記入する

では、この手順について「現金有高>帳簿残高」「現金有高<帳簿残高」に分けて詳しく解説していきましょう。

仕訳のポイント

  1. 帳簿を実際有高に合わせる
    →「帳簿側の現金を増やす」のか「帳簿側の現金を減らす」のかを考える
  2. 現金は通貨だけではない
    →簿記上の現金(通貨・通貨代用証券)が対象

例題とともに理解する ①-1:現金有高>帳簿残高の場合

例1)
現金の帳簿残高と実際有高を照合したところ、実際有高が¥1,200だけ超過していた。

STEP1)帳簿上の現金残高を「増やす」のか「減らす」のか判断する

  • 実際有高が超過しているので、帳簿の現金残高を増やすと判断します。

STEP2)帳簿上の「現金」の借方貸方を確定し、記録する

  • 帳簿の現金残高を増やすので、現金(資産)の増加となり、借方に記入が確定します。
借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
現金 1,200

STEP3)帳簿上の現金の反対側に「現金過不足」を記入する

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
現金 1,200 現金過不足 1,200


※複式簿記のルール通り、
借方と貸方の金額は一致します。

例2)
月末に金庫を確認にしたところ、紙幣¥30,000、硬貨¥5,000、得意先振出の小切手¥10,000、郵便切手¥500が保管されていた。
帳簿の現金残高は¥45,000だったので、不一致の原因を調べたが判明しなかったので現金過不足勘定で処理することにした。

STEP1)帳簿上の現金残高を「増やす」のか「減らす」のか判断する

  • 金庫内にあったもので現金となるのは、紙幣、硬貨、得意先振出の小切手の3つです。
    よって、実際有高は¥30,000+¥5,000+¥10,000=¥45,000になります。
  • 実際有高¥45,000帳簿上の現金残高¥42,000を比較し、帳簿上の現金を¥3,000増やすと判断します。

STEP2)帳簿上の「現金」の借方貸方を確定し、記録する

  • 帳簿の現金残高を増やすので、現金(資産)の増加となり、借方に記入が確定します。
借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
現金 3,000

STEP3)帳簿上の現金の反対側に「現金過不足」を記入する

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
現金 3,000 現金過不足 3,000

※複式簿記のルール通り、借方と貸方の金額は一致します。

今回の問題の場合、簿記上の現金をしっかり理解しているかがポイントです。
簿記上で現金の勘定科目に該当するのは「通貨」と「通貨代用証券」です。
よく覚えていない場合には、<強化学習1-1>勘定科目「現金」の詳細と仕訳方法を復習してみてください。

例題とともに理解する ①-2)現金有高<帳簿残高の場合

例3)
現金の帳簿残高と実際有高を照合したところ、実際有高が¥1,400だけ不足していた。

STEP1)帳簿上の現金残高を「増やす」のか「減らす」のか判断する

  • 実際有高が不足しているので、帳簿の現金残高を減らすと判断します。

STEP2)帳簿上の「現金」の借方貸方を確定し、記録する

  • 帳簿の現金残高を減らすので、現金(資産)の減少となり、貸方に現金を記入することが確定します。
借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
現金 1,400

STEP3)帳簿上の現金の反対側に「現金過不足」を記入する

  • 先ほど現金を貸方に記入したので、その反対側の借方に現金過不足を記入します。
借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
現金過不足 1,400 現金 1,400


※複式簿記のルール通り、
借方と貸方の金額は一致します。

例4)
月末に金庫を確認にしたところ、紙幣¥1,000、硬貨¥5,000、約束手形20,000が保管されていた。
帳簿の現金残高は¥37,000だったので、不一致の原因を調べたが判明しなかったので現金過不足勘定で処理することにした。

STEP1)帳簿上の現金残高を「増やす」のか「減らす」のか判断する

  • 金庫内にあったもので現金となるのは、紙幣と硬貨の2つです。
    よって、実際有高は¥1,000+¥5,000=¥6,000になります。
  • 実際有高¥6,000帳簿上の現金残高¥37,000を比較し、帳簿上の現金を¥31,000減らすと判断します。

STEP2)帳簿上の「現金」の借方貸方を確定し、記録する

  • 帳簿の現金残高を減らすので、現金(資産)の減少となり、現金を貸方に現金を記入することが確定します。
借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
現金 31,000

STEP3)帳簿上の現金の反対側に「現金過不足」を記入する

  • 先ほど現金を貸方に記入したので、その反対側の借方に現金過不足を記入します。
借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
現金過不足 31,000 現金 31,000

※複式簿記のルール通り、借方と貸方の金額は一致します。

今回の問題の場合、簿記上の現金をしっかり理解しているかがポイントです。
簿記上で現金の勘定科目に該当するのは「通貨」と「通貨代用証券」です。
よく覚えていない場合には、<強化学習1-1>勘定科目「現金」の詳細と仕訳方法を復習してみてください。

②一致しない理由が判明したとき

仕訳の手順

帳簿残高と実際有高が一致しないと気付いたときには理由が分からなくても、のちのちなぜ合わなかったのか原因が判明するときがあります。

原因が判明したときには、次の手順で仕訳を行います。

【現金過不足の仕訳:②一致しない理由が判明したとき】

STEP1|
判明した原因の勘定科目と増加と減少を判断する


STEP2|
判明した原因の貸方借方を確定し、記録する

STEP3|
原因の反対側に「現金過不足」を記入する

では、この手順について「現金有高>帳簿残高」「現金有高<帳簿残高」に分けて詳しく解説していきましょう。

例題とともに理解する 原因が判明したとき

例1)
以前、現金過不足で処理していた¥3,000のうち、¥2,500は出張交通費の記帳漏れであることが判明した。

STEP1)判明した原因の勘定科目と増加と減少を判断する

  • 「出張交通費」の勘定科目は「旅費交通費」で、「費用」グループの勘定科目です。
  • よって判明した原因は、旅費交通費の増加と判断します。

STEP2)判明した原因の貸方借方を確定し、記録する

  • 旅費交通費は、費用の増加なので借方に記入することが確定します。
借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
旅費交通費 2,500

以前、現金過不足で処理した金額は¥3,000ですが、原因が判明したのは¥2,500分なので、仕訳で記帳する金額は¥2,500になります。
残りの¥500分はこの段階では仕訳する必要はありません。

STEP3)原因の反対側に「現金過不足」を記入する
  • 先ほど、旅費交通費を借方に記録したので、現金過不足は反対の貸方に記録します。
借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
旅費交通費 2,500 現金過不足 2,500

※複式簿記のルール通り、
借方と貸方の金額は一致します。

 

例2)
以前、現金過不足で処理していた¥5,000は、売上の記帳漏れであることが判明した。

STEP1)判明した原因の勘定科目と増加と減少を判断する

  • 売上の勘定科目は「売上」で、「収益」グループの勘定科目になります。
  • よって判明した原因は、売上(収益)の増加と判断します。

STEP2)判明した原因の貸方借方を確定し、記録する

売上(収益)の増加なので貸方に記入することが確定します。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
売上 5,000
STEP3)原因の反対側に「現金過不足」を記入する
  • 先ほど、売上を貸方に記録したので、現金過不足は反対の借方に記録します。
借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
現金過不足 5,000 売上 5,000

※複式簿記のルール通り、
借方と貸方の金額は一致します。

 

③原因が不明なまま決算を迎えたときの仕訳手順

本来、期末までに実際有高と帳簿残高が一致しない原因は分かって欲しいところです。

ですが、どうしても決算まで原因が分からない場合には、雑損または雑益に振り替えます。

仕訳の手順

【現金過不足の仕訳:③原因が不明なまま決算を迎えたとき】

STEP1|
雑益と雑損のどちらに振り替えるか判断


STEP2|
原因不明の現金過不足を減少させる

STEP3|
現金過不足の反対に雑益または雑損を記入

本来、期末までに実際有高と帳簿残高が一致しない原因は分かって欲しいところです。

ですが、どうしても決算まで原因が分からない場合には、雑損または雑益に振り替えます。

この現金過不足を損益または雑益に振り替える仕訳は、9つある決算整理仕訳のひとつです。

ちなみに、決算整理仕訳は基礎学習7基礎学習16ですでに学習済みの内容です。

まず最初に雑損と雑益の振替ルールについて解説します。

現金過不足の振替ルール

雑益と雑損のどちらに振り替えるかは次のルールに従います。

■雑益と雑損の振替ルール

現金過不足が借方にある場合:雑損(費用の勘定科目)
現金過不足が貸方にある場合:雑益(収益の勘定科目)

雑益と雑損の判断のコツ

雑損と雑益のどちらかスラスラ判断できるようになるためには、

まずこの3つことを覚えてしまいましょう。(これは暗記でOKです)

  1. 雑損=費用の勘定科目
  2. 雑益=収益の勘定科目
  3. 現金過不足は決算で「費用の増加」「収益の増加」のどちらか明確にする

雑益の益と収益の益がおなじなので、こちらさえ覚えられれば自然と雑損は費用と思い出せますね。

「費用の増加」と「収益の増加」は、借方と貸方のどちらに記録するか仕訳の奥義で覚えていれば、振替の判断は簡単です。

費用の増加=借方に記録する内容

なので、借方に記録された現金過不足は、費用の増加のポジションとなり、費用の勘定科目「雑損」に振り替えると判断します。

収益の増加=貸方に記録する内容。

なので、貸方に記録された現金過不足は、収益の増加のポジションとなり収益の勘定科目「雑益」に振り替えると判断します。

雑益と雑損の判断方法はOKでしょうか。

では、原因が不明のまま決算を迎えたときの仕訳の解説に移りましょう。

③-1)現金過不足が借方にある場合(実際有高>帳簿残高のまま決算)

STEP1)雑益と雑損のどちらに振り替えるか判断(実際有高>帳簿残高のまま決算の解説)

まずは、実際有高>帳簿残高で一致しないとことが判明した時の最初の仕訳結果を思い出します。

借方勘定科目 現金 貸方勘定科目 金額
現金 △△△ 現金過不足 △△△

ここで勘定科目「現金過不足」に着目します。

現金過不足が借方にあるので、雑益に振り替えると判断します。

STEP2)原因不明の現金過不足を減少させる(実際有高>帳簿残高のまま決算の解説)

現金過不足を「雑益」に振り替えるためには、今ある現金過不足を減らす必要があります。

そこで、現金過不足を借方に記録します。

借方勘定科目 現金 貸方勘定科目 金額
現金過不足 △△△

STEP3)現金過不足の反対に雑益を記入(実際有高>帳簿残高のまま決算の解説)

そして、雑益を反対の貸方に記録します。

借方勘定科目 現金 貸方勘定科目 金額
雑益 △△△ 現金過不足 △△△

ちなみに複式簿記のルール通り、借方と貸方の金額は一致します。

STEP2とSTEP3は逆してもOKです。

③-2:現金過不足が借方にある場合(実際有高<帳簿残高のまま不明)

STEP1)雑益と雑損のどちらに振り替えるか判断(実際有高<帳簿残高のまま決算の解説)

まずは、実際有高<帳簿残高で一致しないとことが判明した時の最初の仕訳結果を思い出します。

借方勘定科目 現金 貸方勘定科目 金額
現金過不足 △△△ 現金 △△△

ここで勘定科目「現金過不足」に着目します。

現金過不足が貸方にあるので、雑損に振り替えると判断します。

STEP2)原因不明の現金過不足を減少させる(実際有高<帳簿残高のまま決算の解説)

現金過不足を「雑損」に振り替えるためには、今ある現金過不足を減らす必要があります。

そこで、現金過不足を借方に記録します。

借方勘定科目 現金 貸方勘定科目 金額
現金過不足 △△△

STEP3)現金過不足の反対に雑益を記入(実際有高<帳簿残高のまま決算の解説)

そして、雑益を反対の貸方に記録します。

借方勘定科目 現金 貸方勘定科目 金額
雑益 △△△ 現金過不足 △△△

※STEP2とSTEP3は逆してもOKです。

 

現金過不足は、多い少ないではなく増やすか減らすかで考える

現金過不足の仕訳を正確に行うには、帳簿残高の現金を増やすか減らすかで考えることが重要なポイントになります。

2つのものを比較するときには、どちらの方が多い?少ない?と考えてしまいがちです。

ですが、現金過不足の仕訳でそれをしてしまうと混乱が生じてしまいます。

なぜ、混乱が生じるのか解説しましょう。

例えば、

実際有高>帳簿残高

この様に不等号で表した内容を多い少ないで考えると次のようになります。

実際有高を主とした場合:「実際有高の方が帳簿残高より多い」
帳簿残高を主とした場合:「実際有高より帳簿残高の方が少ない」

実際有高と帳簿残高のどちらを主とするかで帳簿残高の後ろにくる言葉が変わってしまいます。

こうなると帳簿残高の現金の借方/貸方を考える際に、資産の増加と減少のどちらだと判断するのかか迷いが生じてしまうのです。

冷静に考えればわかることかもしれませんが、緊張している試験では特にミスにつながります。

では、同じ内容を帳簿残高の現金を増やすか減らすかで考えてみましょう。

実際有高>帳簿残高この場合、

実際有高に帳簿残高を合わせるには「帳簿上の現金を増やす」の一択になります。

実際の現金である実際有高をなかったことにするという考え方はありえないので、帳簿の方を調整することになります。

逆の場合も念のため解説しておきましょう。

実際有高<帳簿残高多い少ないで考えてしまうと

実際有高を主とした場合:「実際有高の方が帳簿残高より少ない」
帳簿残高を主とした場合:「実際有高より帳簿残高の方が多い」

このように何を主としたかで、帳簿残高の後ろにくる言葉が変わります。

ですが、増やすか減らすかで考えれば、

実際有高に帳簿残高を合わせるには帳簿残高を「現金を減らす」の一択です。

ここまでOKでしょうか。

では、次からは現金過不足の具体的な仕訳方法について解説していきましょう。

【練習問題】現金の仕訳

Coming Soon

まとめ

強化学習●のポイント

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では、次の強化学習●で*****習得していきましょう。

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