基礎学習

<基礎学習5>簿記の記帳方法「単式簿記」と「複式簿記」を理解する【日商簿記3級】

簿記には「単式簿記」と「複式簿記」の二種類の記帳(記録)方法があり、日商簿記3級では「複式簿記(ふくしきぼき)」が出題されます。

基礎学習4で学んだ「簿記上の取引」が発生したら、簿記のルールに従って記録を残すのですが、その記録方法が簿記3級では「複式簿記」になるというわけです。

ただ、「複式簿記」のみ理解するより、「単式簿記」とあわせて理解した方が違いが分かりやすいので単式と複式の両方を解説していきます。

それでは「単式簿記」と「複式簿記」について解説していきましょう。

「単式簿記(たんしきぼき)」を詳しく

単式簿記とは?

単式簿記とは、

簿記上の取引を1つの勘定科目(現金)に絞った記帳方法

です。

単式簿記の場合、帳簿には「いつ、どうして、いくら現金の増減があったのか」が記録されていきます。

例えば
  • 12月23日に電気代10,000円を現金で支払った
  • 12月28日に商品Aを30,000円で販売し、代金を現金で受け取った
  • 12月30日に銀行Aから借り入れた50,000円が当座預金口座に振り込まれた

という取引があったなら、単式簿記では次のように記録ます。

※現金残高が20,000円だったと仮定する

日付 摘要 収入 支出 現金残高
12月23日 水道光熱費(電気代) 10,000 10,000
12月25日 売上(商品A) 30,000 40,000
12月30日 借入金(銀行A) 50,000 90,000

(項目名や並びはこれが必須ではありません)

さて、先ほどの例にあるように単式簿記では、

  1. いつ=日付
  2. どうして=摘要
  3. いくら現金の増減があったのか=収入・支出

が端的に記録されています。

単式簿記は、簿記の知識が全くない方でも簡単に始められるのが特徴です。

身近なものでいうなら、家計簿やお小遣い帳、預金通帳が単式簿記の形式になります。

なお、単式簿記は簡単に記帳することができることから、別名「簡易簿記(かんいぼき)」とも呼ばれています。

単式簿記のデメリット

単式簿記は、とてもシンプルで簡単なのですが残念ながらデメリットがあります。

単式簿記の1番のデメリットは、

  • 簿記上の取引のうち「資産」や「負債」の残高管理ができない

ということです。

そのため、

  • 借金であっても収入として処理するので「収益」が増えたように見える
  • 帳簿の内容から「貸借対照表」の作成ができない

という弊害が起こるのです。

さて、この単式簿記のデメリットを解消するのがこのあと解説する「複式簿記」になります。

「複式簿記(ふくしきぼき)」を詳しく

複式簿記とは?

複式簿記とは、

簿記上の取引の二面性(原因と結果)に焦点を当てた記帳方法

です。

複式簿記の場合、帳簿には「いくら現金の増減があったのか(結果)」「なぜ現金の増減が起きたのか(原因)」が記録されていきます。

そして、原因と結果という二面性を記録するために次の2つの特長があります。

  1. 「借方(かりかた)」と「貸方(かしかた)」と呼ばれる2つの項目を使う
  2. 「借方側の金額」と「貸方側の金額」は常に一致する

②については、貸借対照表や損益計算書でも同じでしたね。

では、複式簿記の記録方法を例題を使ってみていきましょう。

例えば
  • 12月23日に電気代10,000円を現金で支払った
  • 12月28日に商品Aを30,000円で販売し、代金を現金で受け取った
  • 12月30日に銀行Aから借り入れた50,000円が当座預金口座に振り込まれた

という取引があったなら、複式簿記では次のように記録します。

日付 借方 貸方
勘定科目 金額 勘定科目 金額
12月23日 水道光熱費 10,000 現金 10,000
12月25日 現金 30,000 売上 30,000
12月30日 当座預金 50,000 借入金 50,000

(複式簿記の形式や使用している勘定科目や並びはこれが必須ではありません)

解説

今の記録を解説するとこうなります。

「電気代10,000円を現金で支払った」は、

原因 電気代(水道光熱費)という「費用」を支払った
結果 現金という「資産」が減った

という2面性からできているので、

借方 水道光熱費 (費用の増加なので借方)
貸方 現金 (資産の減少なので貸方)

となります。

まだ、「仕訳」を詳しく学習していないので、どのように借方と貸方を判断しているのか謎だと思います。

今はなんとなく解説を読み進めて、次の基礎学習6の仕訳を理解してからこのページに戻って読み直してみてください。

さて、今の内容を帳簿への記録するとこのようになります(↓)。

日付 借方 貸方
勘定科目 金額 勘定科目 金額
12月23日 水道光熱費 10,000 現金 10,000

では、残りも解説しますね。

「商品Aを30,000円で販売し、代金を現金で受け取った」は、

原因 商品Aを販売し「売上」が増えた
結果 代金の現金「資産」が増えた
借方 現金 (現金の増加なので借方)
貸方 売上 (収益の増加なので貸方)
日付 借方 貸方
勘定科目 金額 勘定科目 金額
12月25日 現金 30,000 売上 30,000

となります。

「銀行Aから借り入れた50,000円が当座預金口座に振り込まれた」

原因 銀行から借り入れをして「負債」が増えた
結果 当座預金「資産」が増えた
借方 当座預金(資産の増加なので借方)
貸方 借入金 (負債の増加なので貸方)
日付 借方 貸方
勘定科目 金額 勘定科目 金額
12月30日 当座預金 50,000 借入金 50,000

となります。

さて、先ほども書きましたが、今はまだ「仕訳」について解説していないので、

  • 取引内容からどうして上のような勘定科目になるのか
  • どうして同じ勘定科目でも取引内容によって借方と貸方が違うのか

などいろいろ疑問があると思います。

次の基礎学習6の「仕訳」を読み進めれば理由がわかるので安心してくださいね。

【参考】複式簿記の書式例

複式簿記の書式は次のような書式になることもあります。

例1)

借方科目 金額 貸方科目 金額
仕入 1,000 現金 1,000

例2)

借方 貸方
科目 金額 科目 金額
仕入 1,000 現金 1,000

どんな書式であろうと、複式簿記は必ず左が「借方」右が「貸方」になります。

ちなみに「科目」とは「勘定科目(かんじょうかもく)」のことで、取引内容がどんなジャンルか分るようにつける名前です。

「勘定科目」は基礎学習8で詳しく解説します。

「借方」と「貸方」の左右の覚え方

複式簿記では、必ず左が借方で右が貸方になるのですが、最初はどちらが左右か混乱します。

ですが、簡単な覚え方があるので安心してください。

「借方」と「貸方」を「かしかた」と「かりかた」のように平仮名になおせば覚え方は簡単です。

「借方」は平仮名にすると「かた」ですよね。
」のはらいが左に向かっているので、借方は左覚えます。

「貸方」は平仮名にすると「かた」ですね。
」のはらいが右にむかっているので、借方は右と覚えます。

ちなみに、借方と貸方という言葉には深い意味はなため、単純に「借方は左、貸方は右」と覚えてしまいましょう。

まとめ

さて、簿記の記録方法「複式簿記」はなんとなくでもご理解いただけたでしょうか。

はじめは何のことかよく分からなず、苦手意識があると思います。

ですが、次の基礎学習6の仕訳を理解し、何度も問題を解くことで、苦手意識はなくなっていきます。

気負わずに次の学習内容へと進んでいただければと思います。

基礎学習5のポイント

単式簿記とは、簿記上の取引を1つの勘定科目(現金)に絞った記帳方法

単式簿記は「いつ、どうして、いくら現金の増減があったのか」というシンプルな記録で済むが資産と負債の管理ができないデメリットあり

複式簿記とは、簿記上の取引の二面性(原因と結果)に焦点を当てた記帳方法

複式簿記は「いくら現金の増減があったのか(結果)」「なぜ現金の増減が起きたのか(原因)」が記録される

取引の二面性を記録するために「借方と貸方」の2つの項目に分けて記録する

「借方側の金額」と「貸方側の金額」は必ず一致する

では、次の基礎学習6で簿記のキモである「仕訳(しわけ)の基礎と奥義」について理解していきましょう。